明けましておめでとうございます。
年を越えると何か新鮮な気持ちがして、ものごとに新たに挑戦する気になれるのは、この国日本のとても良い習慣文化ではないでしょうか。
そういうわけですから、新年は何はともあれ元気を出して、皆さん一人一人が自分に見合った高みを目指して、清々しい気持ちでスタートしていただければと願っております。
さて、皆さんは今年の目当てにどのようなことを掲げますか。

時流を踏まえた目当てであってほしい

私は前号のブログで、このところ日本の基幹産業で起きている品質問題を取り上げ、その信頼性の向上と確保のためにマネージメント組織の検証と再構築が必要であるとの警鐘を鳴らし、そのような仕事に携わる人達のみならず、そのユーザーでもあり支援者でもある国民の皆さんが日本の産業の品質管理体制の現状をもっと良く知り、その改善のために厳しい目と意見を持ってもらいたいという主旨のことを述べました。
確かに、消費者にしてみれば身近で安い物がいち早く手に入るということは便利で助かることなのですが、その過当競争に押されてそのマネージメントの守備能力を超えてまで生産性を増強させている産業界の中で、その社内の信頼性管理システム(総合的品質経営:TQM)に疲労破壊が起きてきており、そのことに内部の人間、特に上層部の人達が気づいていない、あるいは知ってもその危険性の認識が低下しているという徴候が私にはみえるからでした。
一方、消費者(国民)としても安くて便利なことの追求には様々な副作用、裏を返せば社会的代償が付きまとうということについての認識をもっと高めることが必要であり、自分たちの欲望とその実現の可否について慎重な考え、すなわち要求(アクセル)一方だけではなく、努めて客観的にかまえて我慢と抑制(ブレーキ)の双方を持った日常行動をとる必要があるということなのです。
(*品質不良、納期遅れ、配送混乱、各種事故、人員不足、価格高騰、労基法違反、資金繰り悪化、信用不安、そしてこれらの果てに発生する社会コストの増加)

このことは、これからの日本の国力の維持増強に直結する基本的な課題でもあり、その改革改善については消費者である国民が厳しい目と意見を持つことこそが一番効果のあがることなのですが、その前提として価格や宣伝、サービスに心を奪われることなく、行き過ぎた贅沢や無駄を自制して、必要以上のことは求めず期待しないようにする理性的な行動が私達一人一人に必要なのです。

私たちはともすれば安心してしまう”全体的ではなく部分的にだけ最適な、見かけだけの経済成長”を追っているだけでは、長い目でみると必ずや社会的騒動につながり、その果て破綻を来すのは明らかなのです。
このような社会的背景から、新年の幕開けに当たって私達が参考にすべき貴重な教えを以下に紹介しておきます。

その基本的精神

これまで述べてきましたように、私は昨今の世情からそれらに振り回されることなく、自分に合った有意義な時間を過ごすことを今こそ大事にすべきと思っていることから、その基本精神として表題に掲げた「人のふりみて我がふり直す」ということを日常の目当てとしています。情報過多の中で下手をするとそれに惑わされそうになることもありますが、大方は一時の満足を満たす程度のものでしかなく、やはり今まで通り無い方がすっきりして良いということに落ち着くのです。

古代中国の格言に「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」(りかにかんむりをたださず、かでんにくつをいれず)というのがありますが、世俗に惑わされずに生きていくためには参考にすべきことばだと思います。このような考えを消極的という人がいるでしょうが、これこそ意志が強くないとできない行為ですから、積極的に見習う方が賢いと思います。特に、これから自分を知らない人達と過ごすようになる人や、文化の違う国の人達と交流するようになる人は、このことを必須の行動原則として守るように努めてください。

いみじくも近頃の風潮を如実に言い表した言葉『人の不幸は蜜の味』というようなことを公共の場で平然と言う人がいますが、これはアルコール依存症の人に酒を勧めるような禁句にすべき言葉であって、軽々しく口に出すべきではありません。精神病理学的にはそれが人の脳の構造と機能がなせる作用として説明できることではあるものの、それに流される状態の人達に対して免罪符を与えるような社会的に弊害のある危険な意味を含んでいるからです。こういうような輩に限って言論の自由を振り回すのですが、何をか言わんやなのです。
人の精神というものは、自らに照らして考えてみると分かっていただけると思いますが、デリケートで弱いものなのです。ですから、皆が相互に正の力を与え合うことに努め、自他の克己心を損なわないように日頃の言動に気をつけることが大事であって、それが社会を正道に導くための制御機構ともなり、活力にもつながることにもなるのです。

私はこれまで、自著やこのウエブサイトのブログなどを通して、私達の身体の中の生理学的制御システムである恒常性(ホメオスターシス)の仕組みを幾度か解説してきました。それは私達の日頃の言動を正常に保つことは、その当人の身体の働きを安定化することにつながり、かつそのような人達で構成された集団は社会の安心、安全の確立につながるという理由からなのですが、ぜひこのことをご理解いただきたく思います。

そもそも、私がこのウエブサイト「MTCJapan」を開設したのは、これまでの自らの失敗や悩み苦しみを経て得た経験を、次代を担う人達に少しでも役立ててもらいたいという思いからだったのですが、そのブログ記事の一番はじめに載せたのが人の精神の安定に役立ててもらいたいとして書いた記事「金言名句(1)先行きを決めるもの」(2015年8月1日)であり、そこで最初に彼のマザー・テレサの言葉を紹介しました。
そしてその年の10月に、その言葉の由来を調べた補足説明を載せたのですが、それは彼女の言葉の原点はヒンズー教の経典にあり、インドに帰化した彼女がキリスト教ながらこの言葉の基本を汲んで述べたものであり、インドの父と称されたマハートマ・ガンディー(1869~1948)もそれ以前にそのような主旨の言葉を残していることも報告しました。
つまり、私が皆さんに伝えたかったことは、自分自身を正道に導くための力の源となる克己心を維持、強化するために必要な日頃の言動、言い換えると「ものごとの真理」は宗教等に関係なく語り継がれていくものだということなのです。
この「ことば」についてはマザー・テレサ(1910年~1997年)の述べた内容が皆さんには一番分かりやすいであろうと思いましたので、新年に当たり時流に見合った「時のことば」として、それをあらためてここに紹介させてもらいます。

マザー・テレサが残したことば

思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。

                 マザー・テレサ

英文
Be careful of your thoughts, for your thoughts become your words;
Be careful of your words, for your words become your deeds;
Be careful of your deeds, for your deeds become your habits;
Be careful of your habits; for your habits become your character;
Be careful of your character, for your character becomes your destiny.
                         Mother Teresa

大事なことなので繰り返させてもらいますが、現世、騒然として、不安いっぱいのこのような世の中であるからこそ、落ち着いて、かたよることなく前向きに生き抜いて行ってもらいたく、そのためにこの言葉の真意を捉え、自らの「道しるべ」として役立ててもらえたら幸いです。
皆様の今年のご健勝とご多幸を心からお祈りいたします。

注釈:本稿でひらがな表記した「ことば」という文言には、古典ギリシャ語の「logos」の意味をくみ取り思想、教説、論証するというような意味を持たせて、あえて漢字の「言葉」と区別して使いました。ただし、キリスト教で使われる「神のことば」という意味までは持たせていません。