世の中が変わってゆくのにともない人の価値観も変化してゆくものですが、それに適応するためには好むと好まざるにかかわらず各自の働き方も変えてゆく必要があります。そうでないと社会に対しても、そして自分にとっても価値ある生き方とはならないからなのです。
この日本でも働き方を改善することの必要性が叫ばれてからすでに久しいのですが、はたしてその進み具合はどうなのでしょうか。
OECD(経済協力開発機構)による公的報告(2018年)を見ると、この日本社会を総体的にみた改善レベル、すなわち日本の生産性(労働生産性)についての国際評価は欧米諸国に比べて極めて低いのが実態です。
 *労働生産性:より少ない労力で多くの経済的効果を生み出すことを定量的に数値化した指標=賃金の原資になる付加価値を生み出す効率性。 日本の時間当たり労働生産性はOECD加盟主要国中20位、1人当たりの労働生産性は21位であり、その主因は製造業に比べてホワイトカラーが携わる仕事の仕組み改革が進んでいないことによります。

私自身が見聞きできる範囲でも、地域的には大都市より地方が、大企業より中小企業が、さらには企業組織よりは行政組織において労働生産性向上の滞りがうかがえます。しかもこの理由に、「予算が無い」、「時間が無い」、さらには「推進する人手が足りない」などの言い訳が異口同音に出てくるのですが、これはまったく本末転倒と言わざるを得ないのです。
そこに透けて見える一番の問題点は、「短期最適」、「部分最適」の呪縛から抜け出せられない組織と構成員、特に上層部の硬直した体質です。
言うなれば、先ず基本的なこととして、個々人においても「長期最適」、「全体最適」な発想をすることが劣っていること。その背景には、組織内に目先のことを早く改善することを強いる傾向があり、先を見た実のある提案や改善行動を評価しない、あるいは評価する能力もないという体質が相も変わらず根強く残っていることが垣間見えます。そういう環境ですから、考えも小さく、行うことも手前勝手なので、結果として社会全体に適応できないレベルで留まってしまうということが多くなるわけです。
この期に及んでどうしてなのでしょうか。この状況は、「井の中の蛙」や「茹で蛙」的と言われようとも、前例が無いことには自ら手を付けず失敗を避けて無難に過ごすという組織風土からいまだに抜け出すことができなくなっている体制と言わざるを得ず、これではこの先の国際競争の中では非常に厳しい立場に追いやられて、苦労するであろうと私は憂慮に堪えないのです。

先に、働き方改革は地方よりは中央の方が進んでいるように述べましたが、見方を変えると必ずしもそうは言えないことがたくさんあります。例えば、テレビの評論番組などで高給取りの面々がマスメディアに乗せられてか傍観者的なつまらないことを延々としゃべりまくっている、また在り来たりの類似評論文があたかも斬新な意見のごとく連日各所で使い回しされているなどの状況がそうです。
私の専門分野である医療の分野でも、科学的根拠の無い薬品、医療機器、化粧品、サプリメントなどが消費者保護を無視し、法の弱点をあざけるように宣伝、販売することが続けていられるということもそうです。そのほか、あげれば切りがありませんが、このような顧客志向から逸脱した無価値なことにしがみついて無駄なお金を浪費し、社会コスト低減の邪魔をしているより、地方に戻って実のあることに汗を流すべきではないのかと言いたくなるような、社会全体の生産性や効率論からみると嘆かわしいことが沢山あるのです。

さて、こんなことを心配している中で、この度、久し振りに中身が濃く味わいのある本に出会い、これは少しでも多くの人が読まれた方が良い内容だと思いましたので、今日はそれをご紹介しておきたいと思います。
その書名は「グローバル化の光と影」という本であり、編著者である大阪市立大学教授・高橋信弘氏の他7名の共著書なのですが、時流の現象から事実を学びとるという学者ならではの手法でそれを忠実に書き表しながらも、冗長にならずにうまくまとめ上げた、私達にとって良好な参考書ともいうべき内容です。
グローバル化に対処するための基本的心構えについては、私もこれまでブログなどで語ってきましたが、この本には私の伝えたかったことが根拠をもって具体的に述べられています。
ご承知のように、世界では今まさにグローバル経済とブロック経済のせめぎ合いが強まってきているわけですが、その影の部分が各国の社会活動に先行き予断を許せない状況へと作用しはじめていることを私は強く感じています。これはまさしく社会の潮流の歴史的変化と言っても過言ではないでしょう。
後段に、この本の目次を記しておきますが、『グローバル経済、貿易摩擦、EU離脱問題、ブロック経済』、『外国人受け入れについての諸外国の歴史と問題点』、『移民政策』、『医療介護問題』など、よく読むとこれらの諸問題を一般の人でも参考になるようにまとめられています。
今、日本が力を入れている観光、オリンピック、万博などのイベント事業からのインバウンド効果はいつまでも続くものではなく、本来の製造業に比べるとその実質的な成果にも限界がありますので、そのことだけに焦点を当てて過剰な期待をすべきではありません。
やはり、まだなんとか経済が安定している今の内に手を打つべき基本的な施策が多々あるわけで、そのヒントがこの本には沢山埋もれています。
変わりゆく今後の社会の構造と機能のために、異文化の正しい理解と交流、そして先を見た協力体制づくりというテーマを中心として、現役の人達はもちろん、次代を担う若い人達もぜひ本書の内容をしっかり読み解き、自分達の真の働き方改革の参考にしていくならば、それら集合体である我が国は先行き道を踏み外すことなく進むことができるようになるでしょう。

なお、私はこの編著者各位とは何も縁ありませんし、出版社からから宣伝を依頼されたわけでもありません。ただ純粋に、今後の人達が働き方を改善して行くに当たって、時流に見合った道を歩むためにこのような本の内容をぜひ参考にしてもらいたいと願ってこのブログを通して皆さんにお伝えするわけです。ともかく、私のこれまでの実践的な経験をもとに強く感じたことがこの本の中にありましたので、推薦図書としてご紹介させていただいたということをご理解頂ければ幸いです。

書名:「グローバル化の光と影」 副題:「日本の経済と働き方はどう変わったのか」
本の主旨:
グローバル化によって日本や関連する諸国の経済や経営、働き方が改善あるいは悪化した事例を通じて、困難な時代を生き抜く方法を示した内容。

著者:高橋信弘 氏(大阪市立大学商学部教授) 他7名
目次:
第1章   グローバル化と働き方のゆくえ
第2章   サービスの海外アウトソーシング
第3章   バブル経済の発生とアメリカの圧力
第4章   日本農業へのグローバル化の影響
第5章   介護に従事する外国人
第6章   外国人社員が活躍するための経営改善
第7章   中堅・中小製造企業における設計業務のオフシェアリング
第8章   アジア通貨危機
第9章   韓国の外国人労働者受け入れ政策
第10章  欧州の移民政策に見るパラドックス
第11章  EUの東方拡大と農業・食品産業
第12章  世界貿易機関

出版社:晃洋書房、 2018年11月30日 初版第1刷発行
価格:2600円+税

以上