食中毒警報今の世において、これだけ情報がゆたかで色々な教育も行き届いているはずなのに、しかも健康や清潔ということについて昔以上に皆が気にしている割には、基本的なこと、すなわちそれに必要な衛生知識についての誤解や欠如があり、そのために正しい方法での実践がなされていないことを、私は非常に心配しています。
私が、潔癖症だからということではけしてなく、もともと衛生学や病理学畑の出であるということをご承知頂いた上でこの記事をお読み頂きたいのですが、都会に行くほどその個人やその関係者に明らかに感染症の原因になると思わせる現象を目にすることが多いのです。
f681479076b6908b3ea8aaf5fae0792e_s一例を挙げると、公共男子トイレでの手洗いのあり方です。小便の後では洗わない、大便後も洗ったとしても指先にちょっと水をかける程度で出て行ってしまう人が予想以上に多いのです。それが一般人でも問題なのに、中には明らかにそのビル内で飲食業に携わっていると思われる服装をした人たちにもその傾向が見られることは、はなはだ困ったことと思っていました。
そんな気持ちでいたところ、今回期せずして消費者庁から次のような手洗いの実態調査結果が公表され、それを見て私は「案の定そうだったか、これではもっと啓蒙が必要だ!」と思った次第です。
http://www.caa.go.jp/safety/pdf/151112kouhyou_1.pdf

さて、これはどうしてなのでしょうか。
たぶん、都会になるほど核家族化が進み、事の重要性を親身になって伝えたり注意し合ったりするような人間的交流が希薄になっていることが原因なのでしょう。
また、人手が少ないことから、やるべき事をしっかり教育・訓練されていないとか、仕事に追われて職場の整理整頓や清掃、そして当人の毛髪も含めた正しい身だしなみの維持などの基本的なことがますますないがしろになってきて、それに加えて「他人の事など知ったことじゃない!」など冷めた気持ちにさせる境遇などの裏事情も重なっていると思われますので、組織的によほどの痛い目にあわない限り是正されないのでしょう。
このような現象は、精神的ゆとりやプロ意識を育みそれを維持することができないような社会情勢となってきていることに要因があるのでしょうから、この是正を官民協力して本質的な面から図ることが必要だと私は思っています。
さらに目に余るのはTV番組です。特に洋食やケーキ業界の新進気鋭者にその傾向が目立つのですが、俺はプロなのだという態度で髪を振り乱して格好良さを見せつける調理人の実演場面などを観て、こんなので良いのだと見習う未熟な同業志望者がきっといるはずなのです。マスコミの人間達もその問題点が気が付いていないことが問題です。このことをぜひ再認識してもらいたく思います。

そうなると結果としてどうなるでしょうか?
そのような環境を経由した飲食物は、一般の人の見た目には分からないものの食品衛生上からみると微生物に汚染された非常に危険なものとなって、皆さんの口に入ることが多くなるのです。
その昔は、社会全体の公衆衛生レベルが低かったことから疫病に侵され、若くして命まで失うことも多く、死亡原因に占める感染症の割合が戦後もしばらく続いていました。
そのようなことから、一般家庭では各自おのずと怪しい物を口にしない、子どもや老人には生水や生ものを飲食させないなどのいましめが日常の習慣として代々伝えられていました。
しかし、今の社会は昔より見かけ上は綺麗になってきて、その恐ろしさも見失い、気にもならなくなってきていることや、先に述べたように事の重要性を伝え聞かせ、上司自らも率先垂範すいはんしながら職場の衛生性の維持向上を図っていくような仕組みが崩れてきたことによる油断や注意の欠如に大きな原因があると思っています。

3cabf8e9cda33b99469d923965459b9c_s私たちの社会は、医薬品や食品で、これまで被害を発生させてきた数々の失敗の積み重ねの結果、各種法令、規則も強化され、ISOやHACCEPなどの優れた国際的規範が浸透してきているはずなのに、ちまたの実際の現場の公衆衛生、食品衛生のレベルはまだまだ改善の余地が大きいと捉えるべきで、私から見るといくらお金をかけて見かけの構造設備(ハード)を立派にしても、食中毒の原因となる病原微生物学の観点からは抜け穴だらけなのです。

それを改善する鍵は人間や作業管理の仕組み(ソフト)にあるのですが、これらのことも先ほど記載した規範の中にはしっかり記載されているのに、実際にはそれらがまだまだ広範囲に、かつ具体的に浸透していないということを経営者や管理者は実際に知る必要があります
また、学童教育の中には保健衛生として、大事な内容が組み込まれているはずなのですが、いつの世も学校の勉強は身に入らないこともあるのでしょうし、おおかたは座学中心で、事の大事さや恐ろしさを知るための適切な実習などが組まれていないことも影響していると私はみていますので、ご家族は家庭でのしつけや監視を怠らないようにしてください。

以上のようなことから、今回あえて皆さんにこのブログを通して、まずは感染症の中でも身近で、かつ時節柄特に注意をしなければならない「食中毒」のことをあえて取り上げ、その啓蒙に協力してもらう願いも含めて、ここしばらく話しを進めたいと思います。
なお、呼吸器系感染症の代表であるインフルエンザも今まさに流行し始めていますが、その対策も基本的には食中毒の対策と重なるところがありますので、同じように参考の上、実践してください。

これから何回かに分けてシリーズとして述べていく内容は、皆さんの周辺でおろそかになっていることであり、再度認識を新たにして気を付け実行するならば、皆さんの健康の維持向上に必ずや役立つであろうことです。
よって、これはブログというよりは教養講座といっても良い構成となるでしょうが、当ウェブサイトの開設目的である「学び舎」に見合った内容でもありますので、ぜひ有効に活用してもらいたいと思います。

時同じくして、先頃、政府から食中毒予防のための広報が出され、内容が皆さんのために分かりやすくまとめられていますことから、まずはこの方を紹介することを先にしたいと思います。
(末尾に記載)

また、同時に国立感染症研究所からも「新型ノロウィルス GⅡ.17」がこれから大流行するであろうとの異例の警戒予報も発表されていますが、上記政府広報の内容はその対策にも有効ですので、皆さんは自ら熟読、理解、実践することに努めるとともに、関係者と情報共有することもぜひお願いします。
中にはこれら知識がすでに頭に入っている読者もおられると思いますが、これまで私がよく言ってきたように『知っていることと、できることは違います』。
よって、個人だけでなく、家族や職場が組織的に実践できるように工夫されるよう、重ねてよろしくお願いします。

以上、この「その1」はこれ以上長くなって時期を逸すことにならないよう上記の大事なことを紹介することに止め、その2は追って掲載します。その内容は、以上のことを真に理解し、身に付けるための科学的根拠、すなわちどうしてこのようなことが必要なのかの理由について、できるだけ噛み砕いて皆さんに説明する予定ですので、次をお待ちください。

政府広報オンライン: 食中毒を防ぐ三つの原則、六つのポイント
http://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/